2016.05.13 02:052016/4/248835 耳の奥残ることばを過去とするあなたの花はもう別の花8834 何ひとつ生み出さず誰も近付けずただ息をする濁流の隅8833 沈むことばかり上手になってゆく明日も黙って笑っていよう8832 息ばかり飲む さみしさをさみしいと表現してはいけない世界8831 泥濘を解き放つためある歌をもう歌えずに夜更け泥濘む
2016.05.13 02:042016/4/208829 神戸線ホームいちばん隅っこの黒いベンチで空を見おくる8828 少しずつ近づいてくる とりあえず、あ、あ、声を放つ練習8827 堪えきれず振り向いてしまう懐かしいいつものきみを見つけてしまう8826 なんでもないふりだけ上手くなってゆく「おはよう」(だめだ少し掠れた)8825 隣りあい電車を待っていることのその特別を得られる今日だ8824 三十分なにを話していただろう空とか川とか繋ぎ合わせて8823 初めての街に降り立つ案内も地図も見なくて歩けるひとと8822 いまだ手は繋げないまま前をゆく背中を少し早足で追う8821 海風は冷たく沁みて沈黙のまま手に触れる理由を生んだ8820 手を繋ぐ、歩く、言葉を交わし合う かけらかけらを奇跡と思う8819...
2016.05.13 02:022016/4/88793 一面にさくら舞い散れこの街の音にできないことばのために8792 ロスタイムなど存在はしないけど許されますか傍にいること8791 ぼんやりと信号が赤に変わるのを目蓋の裏で見つめ続ける8790 隣り合うことにも慣れてきましたか前より少し広がる歩幅8789 肘と肘ふれあう距離にいることも受け入れてゆく駅近のカフェ8788 ひとつきりぼんやりとただぼんやりとベンチにへたる物体となる8787 流星雨降るたび欠けてゆく恋をまだ恋と呼ぶ歪な覚悟8786 宇宙ほど広いあなたの手の中でころころころころ笑っていよう
2016.05.13 02:012016/4/68783 まだ少しあたたかな体を撫でて(ありがとう)言い聞かせるように8782 こんなにも晴れたきれいな春の日に はな、はな、散ってしまう名だった8781 父も母もはなもわたしもいのちならどれもいつかは失くなるいのち8780 病む父の代わりに逝ったと納得をさせたい母は自らに言う8779 こわがりのしっぽに「はな」と呼びかける朝を失くして花ばかり散る
2016.05.13 02:002016/4/58778 記憶なら全てデータに移されて僕等の日々は更新される8777 目の奥の痛みにぎゅっと耐えながら春の見えないスマホを弄る8776 もう入荷されることもなく期限切れ間近のことばを何度も食べる8775 奥底のあなたの記憶の貯蔵庫が空っぽになるほどの半年8774 眠れないことを飲み込む代償に嘘みたいな白昼夢をみせて
2016.05.13 01:592016/4/48773 黒と白、青とオレンジ せめて外側は似てないふたりを選ぶ8772 立ち止まることは許されないいつも同じ歩幅でレールを進む8771 同じ目と同じ鼻同じ唇であなたに恋を告げるいもうと