2011.05.17 02:16小指手を繋いでいた。心はその指先を伝って相手に響く。離れかけた日も辛うじて小指だけはしっかりと結んでいた。いつからだろう。小指だけ繋いだその指先が、じわじわと、少しずつ少しずつ、離れてゆく。君がわからなくなった、と思った時には、既に指先は完全に離れてしまった後だった。(2011.05.17)
2011.05.17 01:58201105161770 退屈な日常 耳を撫でたあの指先は過去の抽斗のなか1769 泣いているつもりはなくて頬伝うこれはねたぶん「液化想い出」1768 いましがた初めて聞いたさよならは一年前から知っていたこと
2011.05.16 00:55後悔お題:『真夜中の路地裏』を舞台に『過去』という言葉を使ったお話真夜中の路地裏。これから僕は長い旅に出る。進む旅じゃない。戻る旅へ。つい先ほど泣きながら去ってしまった彼女…こんな今は要らない。彼女を傷付ける前の僕に、戻って忠告を。ほら、こんなに雨が降っている。上を向いていたら空に吸い込まれて過去にでも飛んで行けそうじゃないか。(2011.05.16)
2011.05.11 15:29201105101767 水分で満ち満ちた空気 嫉妬している君に似た重さと甘さ1766 ぼんやりと会いたいと呟いていたこんなのきっと雨のせいだね1765 零れ落つ執着は過去に置いていけ さよなら君に囚われた僕1764 もう君に恋はしてないけれどまだ抱かれてもいいと思える不思議
2011.05.10 13:11遠距離お題:『夕方のホテル』を舞台に『距離』という言葉を使ったお話「遠距離とか勿体無いよね」夕陽がホテルの部屋と彼女をオレンジに染めている。「毎月の交通費と宿泊代考えたら一緒に住めると思う」「…うん」ぼんやり彼女を眺めつつ適当な相槌を打つ。「結婚しようって言ってるんだけど」「え、あ、ハイ」思わず頷いた。それが僕らの始まりだった。(2011.05.10)
2011.05.10 03:12201105091763 青空を切り取るような明るさで陰解く君と見たハナミズキ1762 振り向いてしまえば輝き無くすよな恋にはしない覚悟を見せて1761 届かない私でいよういつまでも君に追いかけていて欲しいから
2011.05.09 08:39報復お題:『「ぎこちなく、両手を折れんばかりに握る」キーワードは「最後」』「じゃあ」振り返る。未練たらしいが最後に彼女を目に焼き付けておくためだ。恐らく僕らは二度と会わないのだから。不意に両手を掴まれた。慣れてる筈なのにとてもぎこちない。「痛っ」「折れちゃえ、バーカ…」音楽の為に全て捨て留学する僕に対するこれが彼女なりの精一杯の報復か。(2011.05.09)
2011.05.09 08:38約束お題:「朝のレストラン」 「約束を破る」 「月」ファミレスの窓から段々と明るくなる空と白い月を眺めていた。「後悔してる?」彼が問う。してないと言うと嘘になる。今日私はついに約束を破った。誕生日は毎年家族で過ごすという両親との約束より、生まれた瞬間を彼と迎えることを選んでしまった。何かが壊れ何かが始まる気がした。(2011.05.08)
2011.05.09 08:36朝の駅でお題:『朝の駅』を舞台に『疲れる』という言葉を使ったお話朝の駅で見慣れた不機嫌顔に駆け寄る。「…ご、ごめん」「遅い。私との貴重な朝の時間はどーでもいいってことね?」「ち、ちげぇよ!寝坊して…!」「…焦った顏、かわいい♪」…脱力した。いつものことながら疲れる。でも、この疲れが少し心地良い…とか、俺どんだけMなんだ。(2011.05.08)
2011.05.06 05:32201105051760 待つことが重みに変わるのは嫌とまたひとつ積む離れる言い訳1759 携帯に君の名を見ることすらも痛い しばらくは名無しで居てよ1758 指先を囚われた夜 猫のよな視線交わして始まる遊戯1757 艶々の爪閉じ込めた花の名も知らぬ君 押し当てる唇
2011.05.05 03:37Mお題:『マゾヒスト』と『サッカー』が出てくる学校が舞台のお話彼は今日もサッカー部全員が帰った後、殺人的な練習メニューを一人でこなす。「何でそんな無理すんの?」「うっせーよ」無愛想に答える彼の口元に浮かぶ小さな笑み。弾き出された答えは一つ。「…マゾ?」「死ね」…あぁ、きっと私もマゾなんだ。彼のそんな暴言が少し嬉しいだなんて。(2011.05.04)
2011.05.05 03:36影お題:「夜の坂道」 「密会する」 「傷」密会の待ち合わせはいつも坂道の途中だった。彼を待つ私の影を街灯が長く濃くアスファルトに刻んでいる。じっと見つめていると不意にその影を踏む足。ズキン。踏まれたところが痛んだ気がした。顔を上げると唇に指を当て無言を要求する彼。この傷はきっと「罪悪感」だと知っている。(2011.05.04)