2014/7/9

6276 ひたひたと満ち満ちてくるかなしみに閉じておけない目蓋を放つ
6275 耳の奥かすかな声を反芻し肯定される安らぎを得る
6274 かなしみはいつも静かに満ちるから少し音量上げて眠ろう
6273 不用意なことで心を乱さずにいつもと同じ笑顔でおいで
6272 向かい合うきみに偽りないからだキャミソール越しでも見えるはず
6271 感触の残るちぶさにシャツだけをかさね分け合うソルティライチ
6270 さらさらと健診着だけで心許ない胸元に丸まる背中
6269 別れ際何度も何度も振り返りうたがう余地すら与えないひと
6268 かんたんにさみしさはくる離れると気づいた瞬間かたくなるゆび
6267 記念日をひとつ増やして耳たぶにきみの代わりと留め置くピアス
6266 手をつなぎショップをめぐるたくさんのカップルのなかのカップルとして
6265 どちらからつないだかもうわからないくらい自然に繋がれるゆび
6264 沈黙に目が合う瞬間待ちきれないくちびるはくる すべて奪いに
6263 とめどないお喋りきみを見ないよう途切れないよう触れないように
6262 キスをするためにある場所を探してる 風きもちいい、なんて言いつつ
6261 ふたりぶん頼まれていたモーニング「いつもの」がこうして増えていく
6260 カフェの奥待ってる人に近づいて「おはよう」少し高くなる声
6259 心だけ置き去りにしてきたような朝まどろみにきみの手の熱
6258 髪からもきみの匂いがする夜を引き延ばすため触れないシャワー
6257 好きだとか言っちゃいけないなんてこと忘れてしまうような月です
6256 雨の足音がする部屋もうだれも訪ねてこない朝をただ待つ
6255 嘘ばかり重ねていつか本当に変わる日を待つ「もうすきじゃない」
6254 思い出にまだできなくて雨の夜ぽつぽつきみの声が消えない

KohagiUta

Kohagi Chihara|tanka & design|

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