線路

お題:「早朝の歩道橋」 「抱きしめる」 「線」

早朝の歩道橋で彼は突然私を抱きしめた。
「人が…」
「…誰も居ないよ」
これから数時間かけて帰らなければいけない。
次に会える保証もない。
そんな現実に圧し潰されそうになっていた。
彼も、同じだったのかもしれない。
朝靄の先へ続く錆びた線路が、二人を繋ぐただ一つの約束に見えた。

(2011.08.20)

KohagiUta

Kohagi Chihara|tanka & design|

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