2014.03.20 06:29#今日はTSUTAYAに寄って帰ろうふと見上げると濃紺色の空にぽつんと下弦の月が冷たく笑っている。…そんな笑い方してるから、独りなんだよ。そう思ってふと気付く。月が孤独に見えるなんて、どうかしてる。…あぁ、ほんとうに独りなのは─「笑ってる月が独りに見えたから #今日はTSUTAYAに寄って帰ろう」動いてないんじゃないか。たまに不安になることがある。あまりにも退屈な毎日、同じことの繰り返しに、この心臓は動くことを忘れてるんじゃ。よし、とびきりのホラーだな。もう一度、息を吹き返すために。「心臓の在り処を確認したくなる #今日はTSUTAYAに寄って帰ろう」何かあるたび泣いてる気がする。小さなことで一喜一憂してしまう、それが恋だと頭ではわかっているけど。今日はもうあなたを忘れてしまいたくなって...
2013.07.08 14:34閉ざされた一面真っ黒な世界で、聴覚だけがやけに研ぎ澄まされてゆく。…どこにいるの。気配がない。ふと、足元でシーツが擦れる乾いた音がする。近付いてくる。きっと、次の瞬間、触れられる、はず。全身の産毛が逆立つような感覚。…はやく、と零れそうになって、くちびるをぐっと噛んだ。視覚だけ遮断されてる足元でシーツの擦れる音がして、待つ
2012.05.31 07:38くるぶしお題:「くるぶし」 「慈しむ」 「色っぽい作品」 「気持ち」慈しむように優しくくるぶしにくちづける彼を少し呆れた気持ちで見下ろしていた。「ねぇ、何でそんなトコなの?」「…ん?ドコがいいの?」挑戦的な上目遣い。「べ、別に…」思わず目を逸らす。「…ほら、その顔」「…え?」「その顔が見られるからだよ」…いつもながら、卑怯な人だ。(2012.05.29)
2012.05.31 07:37車内にてお題:『昼の車内』 『ため息』真昼、駅前ロータリーに車を停め、次のひとことを待つ。ここで、さよならなのだ。静かな車内。何か言葉を発したら別れが一瞬でやってきそうで何も言えずにいた。「…ため息ばかりだね」「…え、ほんと?」「…わかるけど」噛み殺したような声。どうやら彼も同じ気持ちでいるらしい。(2012.05.27)
2012.05.31 07:36遠距離お題:「メール」、冷やかな作品を創作しましょう。補助要素は「遠い場所」です。 遠距離なんだから。触れ合って分かり合えることなんて年に数回あれば良い方。基本的にこの恋はメールで進行してゆく。なのに。最近言いたいことの3割も伝えられてない。書いては消して書いては消しての繰り返し。君を好きだと思うほど、メールはどんどん短く簡素に淡白になってゆく。(2012.05.27)
2012.05.31 07:35わがままお題:「嬉しそうに、両手を握り締める」 「わがまま」「ワガママ言ってもいいよ」お酒にまかせてそう言うと、彼は少し驚いた顔をして俯いた。そのまま私の両手をそっと握りしめる。口元だけが嬉しそうに緩む。「…ごめん、限界。俺ダメだ、全然余裕ない…」余裕ない、なんてズルい。そんな風に愛しさを見せつけられたら抗えるわけがない。(2012.05.26)
2012.05.31 07:34伝えるお題:「そっと、両手を両手で包む」 「昼間」そっと両手を両手で包む。「何?急に…」驚き顔の君。今ここにいてくれてありがと。今君がいてくれなきゃ、わたしきっと崩れてしまってた。…そんなこと、言わないけど。真昼間、ふたりきりの部屋で、何だか急に君の存在に感謝したくなっただなんて、どう言えば伝わるんだろ。 (2012.05.23)
2011.12.31 07:27もう二度とお題:『言葉にも声にも出来ない・穏やかな笑顔に満たされる・もう二度と伝えることは出来ない』もう二度と伝えることが出来ない言葉がある。僕はその言葉だけを注意深く避け、全力で彼女を笑わせようとする。彼女のほころぶように穏やかな笑顔を見ていると、それだけで、この言葉にも声にも出来ない想いが満たされてゆく気がする。…たとえ、それが錯覚だとしても構わない。(2011.12.31)
2011.12.20 07:24待ち合わせごっこ駅前の煌びやかなツリーの前であの人を待つ。雑踏、ビルの向こう、改札、どこかに姿が見えるのではないかと目を凝らす。やがて、同じように待ち合わせをしていた沢山の人たちも、一人また一人と雑踏に消えていく。来るはずのない人を待つ、待ち合わせごっこも、そろそろおしまい。(2011.12.20)
2011.12.17 07:23シトラスお題:『シトラスの香水・雪解けのように・涙はいつか止まるもの』不意に、君といた夏の記憶が蘇る。真冬なのに何故だろうと思ったら、シトラスの香水の香りがしたからだと気付いた。毎日が甘酸っぱくて新鮮で、今と正反対だった頃。涙はいつか止まるもの。春がきて雪が解けるように、ここから動けなくなった私も、いつか変われる日が来るのだろうか。(2011.12.17)
2011.12.17 07:18言い訳お題:「昼の遊園地」 「言い訳する」 「プレゼント」真昼でも冬の遊園地は寒かった。「さむ…」彼女は小さな手に息を吹きかける。…計画通り。僕はポケットから女物の手袋を取り出し投げ渡す。「寒かったら使えば?」「でも…これ…?」「やるよ」こんな言い訳がましい方法でしかプレゼント一つ渡せない僕に、彼女は満面の笑みを向けた。(2011.12.17)
2011.12.01 05:15鍵お題:『この先に何もないと知っている・君には分かるまい・悲しみを放り投げて』掌の中に硬く生温かいものを感じつつ、僕は無言で彼女の前に立っていた。駅の改札。この先、何もないことは知っている。けれど最期の一言が言えない。こんな感情、きっと君には分からないだろう。僕はゴミ箱に掌の中の鍵を放り投げた。それはまだ温もりの残る、僕の悲しみそのものだ。(2011.11.23)掌に残る温もりこの鍵は僕の悲しみそのものでした