強がり

お題:「夕方の歩道橋」 「つよがる」 「花」

■140文字以内Ver.

夕方、駅に続く歩道橋で、僕らは無言のまま佇んでいた。
ここを渡り終えたら、またしばらくの間、離れ離れだ。
彼女の指にはさっき贈った花のモチーフの指輪が光る。
「…それ、邪魔になったら外してて」
強がってみる。
「…いいの?」
瞳を覗き込まれた。
全てお見通しなのだから敵わない。

---------------------------------------------------------

■長めVer.

夕方の歩道橋を彼女と渡る。
階段を降りて駅に着けば、また長い間離れ離れになることは、お互いわかっていた。
「…この花可愛い」
渡り切ったところで突然彼女がしゃがみ込む。
「時間、無いよ」
「…わかってるよ…もう…」
「ほら、早くしなよ」
そのまま不満気な彼女を駅まで急かす。
膨れっ面を見送りながら、心の中で密かに詫びる。
ごめん。
冷たくしてるのはわかってるんだ。
本当は強がっているだけだ。
─いつも別れの時は心を閉ざす。
そうでないと、このままずっと、繋いだ君の手を離したくなくなるから。

KohagiUta

Kohagi Chihara|tanka & design|

0コメント

  • 1000 / 1000