題詠100☆2024 投稿100首

2011年からの毎年2月のお楽しみ「題詠100」!(旧「題詠マラソン」「題詠blog」)
今年もTwitter上でお題に参加させていただくこととなりました。五十嵐さん、中村さん、いつもありがとうございます。
14回目の参加となる今年は、なんとか11月中に完走!
最近、遅刻が多かったので嬉しいです。
以下、今年の題詠100首です。(番号:お題/短歌)


001:言/そばにいる、って言ってくれたこと書いておくね ぜんぶ忘れて生きていきそう
002:置/窓際で枯れてゆく花 すきになればなるほどいつも置いていかれる
003:果/約束を果たす時間もくれなくて約束のままさよならになる
004:吸/まだ春になれない空を吸い込んで独りに慣れる朝のベランダ
005:大切/大切なものほどこぼれ落ちてゆくこわさないよう抱くゆるい腕
006:差/誤差ほどの違いはひびに進化して話せないまま夜を育てる
007:拭/まだ拭いきれそうにない喪失をそのままにして日々息をする
008:すっかり/この先にあるんだろうかすっかりと元通りみたいに笑う日は
009:可/残された思いが可視化されてゆくあなたのものをひとつ捨てるたび
010:携/契約を切れないままの携帯のもう使わないきみの番号


011:記/痛くても忘れないよう失った朝の記憶を何度も起こす
012:ショック/不意にくるショックのようにあの朝のあなたの顔が日常を裂く
013:屈/屈みたくなる日は屈む 事件、事故、梅の開花もすべてしらない
014:外国/感情が溢れないようわからない外国の音楽だけを聴く
015:見/すこしだけ居なくなりたい きみのいない世界を見続けるのはこわくて
016:叡/こんなにも晴れて比叡山まで見えてあの雪のこと話したいのに
017:いとこ/叔父叔母もいとこも夫も居なくなり子まで亡くした義母の丸い背
018:窮/窮屈な思考をほどくために取る切符一枚、たった一枚
019:高/高すぎるビルより高い空よりも高いどこかへあなたは還る
020:夢中/なにもかも忘れるくらい夢中にはなれなくなってちぢまる世界


021:腰/やわらかに腰にふれる手 大きくてやさしくて誰かにもふれる手
022:シェア/なにもかもシェアする世界でさみしさも顔も知らないひとと分け合う
023:曳/誰もいない浅瀬にひとり舟を曳く夢でもきみを見つけられない
024:裏側/頑なに見せてくれない裏側を知りたくなって二杯目のビール
025:散/いつのまにか散り散りになってしまってたわたしをやっと拾いはじめる
026:頁/貼りついた頁を剥がす忘れたい日々もわたしの物語なら
027:おでん/端々に忘れられないことばかり たとえば好きなおでんの具とか
028:辞/灰色の日々に辞表を投げつけて風受けつつもゆく春の野辺
029:金曜/二日間会えないことをのみこんで金曜夜の川辺を帰る
030:丈/いつのまにか大丈夫が口癖になり泳いでないと死んじゃうさかな


031:けじめ/けじめなく流れのままにただよって飽和する春つながれない手
032:織/人生は織物らしくあなたとはちょうどいま交差しているところ
033:制/制服のスカートのひだもとけてゆき境界あわく三月は過ぐ
034:感想/いまここでわたしとこうしていることの感想ひとつ君は吐かない
035:台/台風のあとのあかるさ あと何度あなたを赦して歩くんだろう
036:拙/拙さをきみには隠せなくなって真夜中うまく書けないことば
037:ゴジラ/できるならゴジラの背びれに引っ掛けて海に沈めて歪なわたし
038:点/春色の点描画のようふれようとすればひかりに溶けそうなひと
039:セブン/マルボロのひとを微かに思い出すマイルドセブンを吸う横顔に
040:罪/善良でありたし罪は罪として春空だけを見て渡る橋


041:田畑/固まった田畑にことばを降らせては奇跡みたいな芽吹きを待った
042:耐/耐えられないことなんてないこれ以上ないほどにもう空っぽだから
043:虫/いまたぶん虫取り網にも引っかかるくらい安易にだれかがほしい
044:やきもち/やきもちのひとつふたつと飲み込んで涼やかでありたい夏はじめ
045:桁/あなたからもらう愛とは桁違い膝を手をひとりじめする猫は
046:翻訳/おそろしく遠回しだけど結局は翻訳するとさよならですか
047:接/折られても折られてもまた接木して育て続けるやさしさの苗
048:紐/荷造りの紐が食い込む痛みだろきみといた日々のすべてを捨てる
049:コロナ/会わないでいることが当たり前になるコロナ禍の数年を経てなお
050:倍/あなたとはきっと倍ほど差があって夜更けひとりで会いたさを飲む


051:齢/年齢のわりに幼い内側でまた嫌われることばかり思う
052:圧力/真夜中の部屋の圧力 闇に目を閉じても悪夢さえ見られない
053:柄/柄物をひとつ買い足す灰色の日々にちいさな花を育てる
054:朧/朧月 見えるものすべてあいまいでいられたら楽になれるだろうか
055:データ/データではこうだ、と熱のない数を投げられて、でも救われている
056:紋/もうきみはいなくてわたしは誰だろう家紋も知らない苗字だけある
057:抑/抑えれば抑えるほどに飛んでいくたましい うまく泣けなくなって
058:反対/無意識の川の反対側にいるあなたみたいな影 待っていて
059:稿/原稿を読み上げるように恋を言うきみにはなにも渡せなかった
060:ユーロ/生温いユーロビートがどこからか聞こえる記憶だけの商店街


061:老/こころには塞げない穴 風ばかり吹いて諦めつつ老いてゆく
062:嘘つき/嘘つきでいてもいいのに夢ひとつ見させてくれないやさしいずるさ
063:写/写真にはうつらないものばかりある前よりすこし離れた心
064:素敵/ほんとうに素敵に見えていたきみの素敵なとこが思い出せない
065:家/家じゅうに残る記憶をひとつずつ深くへ仕舞う泣かないように
066:しかし/しかしまだ言えないことは残っててわたしはいつもやさしいふりで
067:許/あの春のわたしを許せないままにこんな明るい夏は来てしまう
068:蓋/記憶にも漏れない蓋があればいい眠れないほどこぼれる夜は
069:ポテト/いつだってポテトの最後の一本は残してくれるけどずるいひと
070:乱/きみが寝てしまってからも眠れずに内側に吹き荒れる乱気流


071:材料/手を離すための材料は揃ったしあとはこの手を離すだけ、だけ、
072:没/きみじゃないなにかに没頭していれば忘れられるとなにかを探す
073:提/もうとうに提出期限の切れている告白をくしゃくしゃに丸める
074:うかつ/どこまでもうかつなひとだこんなにも無防備に愛されてしまって
075:埒/このままじゃ埒があかないさよならをひとつふたつとまたかわされて
076:第/人生を落第しそうな毎日に立ち上がり方を思い出せない
077:オルガン/ふかふかと踏めば鳴りだすオルガンのようだ泣きたくなんてなかった
078:杯/どうでもいい天気のことを精一杯話すふたりに掛かる暗雲
079:遺/また眠れない夜はきて遺された物もわたしも動けないまま
080:なかば/人生のなかばできみはいなくなりからっぽな夜だけが佇む


081:蓮/もうなにも感じたくない永遠を蓮の葉の翳りで眠りたい
082:統一/亡くなった人と失くしていく人と表記統一できない記憶
083:楼/蜃気楼ふれられる距離にいた日々が傷つけながら癒してくれる
084:脱/さみしさにそぼ濡れていた日常を脱皮するべく秋晴れをゆく
085:ブレーキ/いつだってすぐブレーキが効くように半歩離れてきみを見ている
086:冥/もうきみは知らないひとで見えるはずのない冥王星だけを探した
087:華やか/華やかな世界が踊る携帯を閉じて明日のパン買いに行く
088:候/天候の悪さを会えない言い訳にすれば離れていけるだろうか
089:亀/気乗りしない約束ひとつ背に乗せて亀の歩みで改札を出る
090:苗/育つかもわからない苗ていねいにことばを重ねあう秋の雨


091:喪/喪失に心が慣れていくようでたまに取り出し濡らしてあげる
092:休日/来ないかもしれない未来をどうやって待てるんだろう休日ひとり
093:蜜/蜂蜜のなかで泳いでいたようなふたりの日々を押し流す雨
094:ニット/大きめの君のニットにざっくりとつつまれていて風は冷たい
095:祈/祈りより動きと約束がほしい「いつか」は叶うことのない音
096:献/脳内の君との日々に献花して冬の街へと踏み出すブーツ
097:たくさん/たくさんの雨たくさんの夜と朝たくさんのねむれない後悔
098:格/格別な夜だと思う日常にならないひとの背にふれていて
099:注/零れないよう蓋をする注がれたことばは補充されることがない
100:思/鈍色にくもる湖どうしたらいいんだろうって一生思う


以上100首、2月2日のスタートで、6月には75首まで終えていましたが、残り25首がスローペースで思い出したようにぽつぽつと詠み、11月21日にゴールとなりました。
今年の裏テーマは「さみしさ」。全体的になんとなくさみしさの漂う100首となっていたら成功です。
毎年のお楽しみ「題詠100」、今年も参加できてとても嬉しかったです。来年は上半期中に終わらせたいな!


★以下、これまでの裏テーマ一覧です。(備忘録)
2011 恋歌
2012 恋歌
2013 学生・学校
2014 大人短歌
2015 痛
2016 色
2017 キャラクターを立てる(女性/30代後半/会社員)
2018 水・液体
2019 五感
2020 食
2021 切なさ
2022 虚構創作なし
2023 恋歌
2024 さみしさ

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