題詠100☆2020 投稿100首

2011年からの毎年2月のお楽しみ「題詠100」!(旧「題詠マラソン」「題詠blog」)
現在はFacebook上で行われているイベントですが、今年も特別に許可をいただきTwitter上でお題に参加させていただくこととなりました。五十嵐さん、そして取り次いでくださった中村さん、ありがとうございます。

10回目の参加となる今年は、自分で設けた裏テーマが難しく、なかなか進まなかったのですが、なんとか今年も最後まで完走することができました。
以下、今年の題詠100首です。(番号:お題/短歌)


2020-001:君/オムレツがつくれることを自慢する君を褒めつつ並べる料理
2020-002:易/手の熱とあまい言葉に崩されてしまえ容易く煮物のように
2020-003:割/水割りとソーダ割りで乾杯をするわたしだけが割り切れない夜に
2020-004:距離/少しずつ距離はちぢまり近頃は無言でたのむあん肝ぽん酢
2020-005:喉/喉元を過ぎても未だちくちくと熱すぎる紅茶みたいなあなた
2020-006:鋭/鋭さは時にやさしさでもあって美しく刃を受け取るトマト
2020-007:クイズ/難解なクイズを解いていくようにスパイスの名を当ててゆくひと
2020-008:頑/頑なな思考回路をほどくためミルクココアをかろかろ溶かす
2020-009:汁/味噌汁に端切れ野菜をぜんぶ入れ中途半端な今日を弔う
2020-010:なぜ/なぜこんなきれいに晴れた日のカフェのランチで別れたいとか言うの

2020-011:域/領域が侵されてゆくプレートに広がるドレッシングの浅瀬
2020-012:雅/終わったら優雅なランチ、と唱えつつ日曜朝を仕事で潰す
2020-013:意地悪/ほんのちょっと意地悪したくなった日に辛めの四川麻婆豆腐
2020-014:客/観客はかぼちゃと思えと言われてもかぼちゃは溜息なんかつかない
2020-015:餌/まるで餌 ランチタイムに食い込んだ作業をしつつ流し込むパン
2020-016:グラス/瓶ビールふたつのグラスで分け合ってそういうふうにきみと暮らしたい
2020-017:境/境界はぼんやりしててちょうどいい間仕切りなしで詰める弁当
2020-018:位/第5位のクレープ屋さんにきみと行き第5位らしさを論じるデート
2020-019:立派/土台だけやたら立派なデコレーションケーキに乗せる小粒のいちご
2020-020:梅/水筒に熱い緑茶をたっぷりと入れてあなたと梅を見にゆく

2020-021:冊/一冊を読み終え気づく冷え切ったコーヒーこれはいい本だった
2020-022:自慢/絹さやのスジを取るのが上手いことだけは確かに自慢していい
2020-023:陥/ネガティヴに陥る夜に蜂蜜とホットミルクはやさしい薬
2020-024:益/損益の外にあるものドリップで淹れた珈琲、猫とこいびと
2020-025:あなた/このあいだ零した涙でできているあなたが舌でうけとる雪は
2020-026:岩/岩よりも硬い決意で本日はふわふわパンケーキを食べに行く
2020-027:慰/おつかれなわたしがわたしを慰めるために与えるソフトクリーム
2020-028:刷/夕食はチキンフィレオとポテトM〜印刷されたサラダを添えて〜
2020-029:オープン/店名が変わっただけの居酒屋の何度目だろう新規オープン
2020-030:建/新しいマンションが建つ駅前に消えてしまった古喫茶店

2020-031:芝居/渋いだけの紅茶で流すこいびとの芝居がかった別れの理由
2020-032:委/ひとつきりのバニラアイスを分けあえば委ねてもいいこのあとのこと
2020-033:虐/被虐的感情を打ち消しながら食むレバニラの苦さと臭さ
2020-034:頃/もうそろそろいい頃合いと蓋を取るひとに別れを切り出せずいる
2020-035:為/それぞれの行為の先に道はある バスを逃してカフェへと向かう
2020-036:撮/空を撮ることでわたしは鳥になるわたあめの雲切り裂いて飛ぶ
2020-037:あべこべ/あべこべな感情にミルクを足して混ぜればすこし苦いカフェオレ
2020-038:私/おはようといつものパンを齧りつつわたしが今日もはじめる私
2020-039:威/威厳あるしっぽの動き ついさっきご飯をくれと鳴いてたくせに
2020-040:スパイ/スパイさながらの動きで朝食をかき込み飛び出していくあなた

2020-041:拒/拒まれてはいないのだろう好かれてもいないのだろう雨降りのカフェ
2020-042:司/眠れないわたしはわたしを司ることもできずに空く缶ビール
2020-043:個/一個ずつ並べるナッツ感情も整理整頓してしまえたら
2020-044:施/施しのことばがほしい夜の果て遠いあなたの蜜に似た文字
2020-045:攻/浮ついた攻防戦も懐かしく胸にドーナツ抱えてねむる
2020-046:わいわい/わいわいと気ままに踊る前髪を撫でつけ撫でつけ食べるラーメン
2020-047:溢/会いたさが溢れ溢れて音にしてしまわぬように飲むハイボール
2020-048:殴/白湯までがにがい清廉潔白な夢に殴られ目覚めた朝は
2020-049:兼/朝食と昼食を兼ねているパンがついに夕食まで兼ねだした
2020-050:削/体温を削られてゆく冬の日のきみのかわりに肉まんを買う

2020-051:夫婦/ひび割れに気づいたままで放置する戸棚の奥の夫婦茶碗を
2020-052:冗/受け取られなかったチョコを食べている冗談みたいな青空の下
2020-053:掌/掌の中ゆるやかに滅びゆく義理のふりした板チョコレート
2020-054:がらくた/がらくたのような言葉も鍋に入れ煮込めばきみを温められる
2020-055:譲/譲ります 卵色したひだまりと眠れる春の特等席を
2020-056:処/見送りのわたしは何処にも行けなくて鳥のかたちのまんじゅうを買う
2020-057:ソプラノ/薄荷色した早春の公園をゆくソプラノの鼻歌とゆく
2020-058:峰/仮定的さよならなどを語り合う巨峰ひとつぶ分け合いながら
2020-059:招/不用意にゆうべ招いたさよならを追い払うよう焼く目玉焼き
2020-060:凶/きりきりと嫉妬に焼ける胃袋を凶悪に甘いココアで埋める

2020-061:まじめ/まじめしか取り柄がなくてごめん このお酒は友人としてのお酒
2020-062:催/閑散とした催事場お返しに買われるどころじゃないチョコレート
2020-063:幽/自らを幽閉しつつ春は過ぐ甘いお菓子で誤魔化しながら
2020-064:父/この春は会わないことが愛となる父のポストに入れる煎餅
2020-065:一部/一部だけちぎられ放置されたパンみたいだ君に会えないわたし
2020-066:硬/考えることに疲れてしまったな硬い蜜柑をひたすらに剥く
2020-067:デビュー/ハイボールデビューを果たすニュースしか声のない静かなワンルーム
2020-068:緊/ほうじ茶がほぐしてくれる気がつけばどこか緊張している日々を
2020-069:裸/焼いたそら豆を裸にするときのきみの短い爪、似ているな
2020-070:板/痛みばかり受け止めている食材もまな板もわたしよりは強いな

2020-071:能/才能の話をしつつうつくしくメロンソーダのアイスを崩す
2020-072:吉/吉凶を問えば間違いなく凶のふたりだ ぬるいビールを注ぐ
2020-073:採/また今日も採用されないさよならをぶつけるためにあおる酎ハイ
2020-074:せめて/さみしさは生地に練り込み型を抜きせめてかわいくほっこり焼こう
2020-075:擦/夜が来るたびにビールを流し込み擦り傷だらけの心を洗う
2020-076:充/圧倒的充電不足 カフェでいい十分でいい髭面でいい
2020-077:武器/日々生きるための武器です小分けした冷凍ごはんはそこそこ強い
2020-078:添/思い出せなくなっていく添えた手の湿りも舌の甘さもなにも
2020-079:内/内側に夜を湛えてあたたかなミルクではもう眠くなれない
2020-080:擁/さみしさと初秋の夜を溶かし込むホットワインはとおい抱擁

2020-081:札/改札が窓越しに見えるカフェにいてわたしを探すあなたを探す
2020-082:秒/数秒の躊躇いで黒焦げになるトーストみたいだきみの嫉妬は
2020-083:剤/五、六粒錠剤を飲みくだす夜ネガティヴに殺されないように
2020-084:始末/後始末ばかり気になる甘やかで甘すぎて毒みたいな恋は
2020-085:臭/ふたりとも臭ければ気にならないとうそぶくひとと餃子を食らう
2020-086:造/恋われても恋にならない人といるカフェの窓辺に佇む造花
2020-087:栽/もういちど苗から栽培するようにきみと二度目の日々をはじめる
2020-088:しばらく/しばらくは会わないと決め浮ついた胃を殴るためのブラックコーヒー
2020-089:里/浮ついた(でも切実な)溜息を吐く里芋を煮転がしつつ
2020-090:植/たった一時間のランチで植えられたきみが根を張り芽吹いてしまう

2020-091:呪/しあわせな呪いのように降る愛があますぎて壊れてしまう舌
2020-092:タッチ/記憶ごとレタッチアプリで消していくパピコも海も夏もあなたも
2020-093:属/付属物的な呼び名にもう慣れて掬っても掬っても灰汁は浮く
2020-094:錠/薄ピンク色のやさしい錠剤であるはずの痛みに蓋をする
2020-095:俗/低俗なわたしの舌と胃に沁みる深夜3時の辛いラーメン
2020-096:機嫌/いつもよりご機嫌な声で放たれる言い訳を聞く 芋を潰しつつ
2020-097:詐/詐欺ですね料理は苦手とか言ってこんなに凝ったスパイスカレー
2020-098:鈍/鈍痛が身の内を焼く届かない返事を待って空ける酎ハイ
2020-099:任/カフェラテの湯気にほぐされすべてから解任されたわたしに還る
2020-100:詠/思いつくまま食べ物を詠み込めばちいさくぐぅと返す胃袋


以上100首、2月2日スタート、最初は調子よく進んでいたのですが、途中からかなりスローテンポになり、12月2日に若干遅刻しつつゴール。
今年の裏テーマは「食にまつわるもの(食べ物・飲み物・料理・食材・キッチン・食べるシーン等)」という設定でした。序盤は順調だったのですが……全部に「食」を入れるの、意外と難しかった……
毎年のお楽しみ「題詠100」、今年も参加できてとても嬉しかったです♪


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