「空き時間歌集を読む会」レポート

先日、泳二さん主催の「空き時間歌集を読む会」に参加してきました。
この会がとても良かったため、レポートを書かせていただくことにしました。

この会は、これまでにあった「批評会」「読書会」とは少し趣向が違っていて、「対象の歌集を事前に読んでこなくていい」というものです。
たとえば、読もうと思って開くけど途中で疲れてしまって通読できないとか、一人で黙読してみたけど意味がわからなくて途方に暮れたとか、そんな人でもみんなで歌集を「とにかく最後まで」読んでみよう、というものです。
歌集遅読なわたしになんてぴったりな企画!ということで楽しみに参加しました。

今回の歌集は、蒼井杏さんの『瀬戸際レモン』(書肆侃侃房・新鋭短歌シリーズ)です。
購入して手元に置きつつ、せっかくなので読む会までは読まずにいよう、と、完全に未読で当日を迎えました。

秋晴れの土曜日の午後、天満橋のSpinOffという素敵スペースでの開催です。
参加者は全部で6人。少なめの人数なので丸い机を3つ三角形に並べて、おやつを広げてゆったりと座ります。
このくらいの人数だからこそ、近い距離で声もよく聞こえて、和やかな雰囲気で語り合えたと思うので、6~8人がベスト人数かもしれません。

一章から順番に、ひとり一連を音読します。
初読なのでつまったりすることもありますが、気にしない。ゆっくりと読んでいきます。
音読している人以外は音と目で歌を味わいつつ、付箋を貼ったりしていきます。
一連を読み終えたら、ちょっとした感想を述べ合います。
「ここの意味がわからないのですが…」「ここの比喩すごいですね」「◯◯がよく出てきますね」など、いろんな意見が出てきて、自分ひとりでは気づけなった読みにも出会えます。
また、音で聴くことで黙読で気づかなかった良さを発見することも。
一章の連をすべて読み終えたら、休憩としておやつを食べつつ、章としての感想を述べ合います。
それを三章分、合計303首行いました。
ここまでで約3時間ちょっと。

その後は、1時間ほどかけて、全体の感想を言い合ったり、会の最初に配られていたプリントに記入をしていきます。好きな歌を5首、そのうち1首に感想を。そして歌集全体の感想も。あとでまとめて参加者に公開されます。(著者さんにも無記名のものを届けてくださるとのこと。)
このプリントがあることで、読んでいる間も好きな歌を選ぶとしたらどれだろう、と考えながら進められるので、まとめとして何かを残すことは必要だと思いました。
ただ、当日その場での記入は文章がまとまらなかったり落ち着いて書けなかったりするので、この部分は後日メールや掲示板で送付する形でも良かったかもしれません。

4時間ほどの会でしたが、一冊を読み終えた充実感がとてもあって、けれど疲れた感覚はなく、楽しくあっというまに時間が過ぎていきました。
何度も戻ったり進んだりした歌集はしっかりとした手触りになり、付箋もたくさん。ひとりで黙読していたらここまでの「しっかり読んだ」感はなかっただろうなと思います。
音読することで音で歌を聴くということ、みんなでとにかく一冊を読み切ること、読みながらダイレクトにいろんな意見を聞くこと、一首一首に着目するだけではなく全体の流れや章による違いなどを検討できること。今回の会はこれまでになかった良さがたくさんあったのではと思います。

ただ、この方式は「その歌集を未読の人がとにかくみんなで一冊読み切る」というコンセプトが基本としてあって、「すでに大好きで何度も読んでいる歌集の一首一首を深く掘り下げて語り合いたい」という方には物足りないかもしれません。
また、会議室など時間が限られているところでは歌数が多い歌集だと読み切れない場合もあるかも。300首くらいがちょうどいいと思います。

これまでの「批評会」や「読書会」の方式もありつつ、こういう形の新しい読む会もこれからあちこちで開かれるといいなと思います。
わたしもひとりでは遅読でなかなか歌集が読めない方なので、どんどん参加させていただきたいです。
このレポートで当日の会の雰囲気や方法などが伝わると嬉しいです。

主催の泳二さん、参加者の皆様、大変楽しい会をありがとうございました!



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