2015/7/30

8063 あなたとは来たことがない懐かしい駅に始まる晴れ間のデート
8062 想像もしなかった知らないままのふたりですれ違っていた駅
8061 「いつもの」を知りたい　歩くルートとかよく行くファストフード店とか
8060 表から見えない席にうずまってそんなふたりとまた自覚する
8059 断りもなく奪われてゆくグラス　無言で寄越す食べかけスープ
8058 わたしならすべてあなたのものですがそのドリンクはわたしのものだ
8057 当然のように最後の一本を与えられ　赦そうか、ポテトよ
8056 火通りの悪い玉ねぎしゃりしゃりと「硬いね」こんなことで笑って
8055 そそくさといつもの店を後にする透明になる魔法ください
8054 わたりますボタンを押さず真隣に並べば永遠みたいな真昼
8053 ここなら手、繋いでもいい　人影も木陰もあわい公園をゆく
8052 見下ろした手に触れそうな一瞬に同じ呼吸で返ってくる手
8051 風通る木陰のベンチもう距離も見失わずに並ぶつま先
8050 同じ空しずかに見上げているだけのこれは何度目のデートでしょうか
8049 石段を上がれば遠くきらきらと眩むあなたが生きている街
8048 この街の誰からも知られないままに確かに恋はここにあります