2014/4/27

5937 次の約束なんてない手のひらにかすかに残る春のぬけがら
5936 会いたいとすぐにメールは飛んできてやっと動けるひとりの駅で
5935 微笑みが消えても少し動けない改札口できみを反芻
5934 改札の外と内とに隔たれて見えなくなるまでがデートです
5933 握る手の力がふいに強くなるここにいるのは現実ですか
5932 完璧な春の日だから完璧な切なさはくる駅までの道
5931 いつだって足りないことはわかってる切り裂くように「よし」と呟く
5930 少しだけ甘えたな王子様だから膝は占有してくれていい
5929 やわらかに触れてしまっていいですか今こんなにも近いくちびる
5928 花のまま落ちてしまうね八重桜拾えばふわり微笑みが待つ
5927 花びらが舞う公園をふたりゆく完璧すぎてこわいくらいの
5926 きみといた記憶としてのおみやげを選ぶまた一つ増えるストラップ
5925 同じものを面白いって笑えたら強いねいつの間にかつなぐ手
5924 延々と同じ動きのアザラシを延々と見ていられるふたり
5923 ひとつひとつ魚の名前を当ててゆき「おいしそう」って同時に言った
5922 「大人二枚」ふたり一緒がまだ少しくすぐったいのに平気なふりで
5921 さり気なく歩く足元を気遣って手を取るどこの王子様なの
5920 あぁこれはすごくデートだどう見てもデートだ春のあふれる街で
5919 ふと気づき慌ててカバンに添えてみるぷらぷらもの欲しげだった右手
5918 駅から手繋いで歩くはずだった会えない日々に戸惑いの距離
5917 別々の日常を生きていることを脳よそろそろ認めてくれよ
5916 ごめんとか愛してるとかこんなとき言うから心に空いてしまう穴
5915 七年の時を経て失うものがわたしをわたしに戻す おかえり
5914 交わりもなくしたころに存在もなくなる恋の代わりの愛だ
5913 とりどりの羽ばたきがあり今日というひかりをまとう始まりがある
5912 ふれあった記憶は朝の陽に溶けてこのままなんでもなくなればいい

KohagiUta

Kohagi Chihara|tanka & design|

0コメント

  • 1000 / 1000